この症状について
30~50歳代のスポーツ愛好家に好発し、一般のスポーツ外傷に比べると年齢が高いことが特徴です。受傷時には、「バットでたたかれた感じ」、「ボールが当たった感じ」などの衝撃を感じることが多いです。
この疾患の原因と状態の説明
アキレス腱断裂の約80%はスポーツ中の発生で、スポーツ外傷のひとつと言えます。
30~50歳代のスポーツ愛好家に好発し、一般のスポーツ外傷に比べると年齢が高いことが特徴です。腱の退行性変性(いわゆる老化現象)が基盤にあると考えられています。
断裂は、踏み込み・ダッシュ・ジャンプなどの動作で下腿三頭筋が急激に収縮した時や、着地動作などで急に筋肉が伸ばされたりした時に発生します。
また、原因は不明ですが、ニューキノロン系の抗菌薬の服用はアキレス腱断裂を誘発する可能性があるといわれています。頻度など詳細なことはまだわかっていません。
この疾患の症状と診断
受傷時には、「ふくらはぎをバットでたたかれた感じ」とか、「ボールが当たった感じ」などの衝撃を感じることが多く、「破裂したような音がした」など断裂した時の音を自覚することもあります。私たち整形外科医は、この訴えを聞けばまずはアキレス腱断裂を考えます。
アキレス腱が断裂していても足関節は動かすことは出来ることに注意してください。受傷直後は受傷肢に体重をかけることができずに転倒したり、しゃがみこんだりしますが、しばらくすると歩行可能となることも少なくありません。 しかし、歩行が可能な場合でもランニングやつま先立ちはできなくなるのが特徴です。
診断は、医療面接(受傷の状況についての話を聞くこと)に加え、触診で診断は確定します。触診では、
①アキレス腱断裂部に皮下の陥凹を触れ、
②うつ伏せで膝を直角に曲げた状態でふくらはぎをつまむと、正常では足関節が底屈しますが、アキレス腱が断裂するとこの底屈がみられなくなります。(Thompson-Simmonds スクイーズテスト:陽性)
画像診断は必須ではありませんが、MRIやエコーで断裂部を視覚的に確認できます。MRIやエコーは治療経過での腱の修復状態の確認に適しており、これを見てリハビリのメニューのステップアップやスポーツ復帰の判断の目安としています。
陳旧性のアキレス腱断裂(断裂から3週間以上経ったもの)では、アキレス腱断裂に特徴的な診察所見が出にくくなるためMRIは必須の検査となります。
この疾患の治療方法
治療は、手術を行わずにギプスや装具を用いて治療する保存治療と、断裂したアキレス腱を直接縫合する手術治療があります。
-保存治療-
入院は必要ないですが、ギプス固定期間は4~6週間行います。
-手術療法-
数日入院し、ギプス固定期間は2週間程度です。
保存・手術ともに、ギプスを外した後は自分で着脱可能な装具を4週間程度使用します。保存治療のほうが、手術治療に比べ再断裂率は高いとの報告が多くあります。
私の意見としては、保存治療では断裂したアキレス腱の長さを正確にコントロールすることは困難であると考えています。手術をしたほうが、受傷前と同じように活発に動けるようになりやすいと考えています。