この症状について
関節リウマチ治療は、新しい治療薬の登場により、炎症や痛みを抑えるだけでなく、病気の進行を食い止めて関節が破壊されるのを防ぎ、患者さんの生活の質を高める治療ができるようになってきました。
この疾患の原因と状態の説明
関節リウマチは、免疫の異常により、主に手足の関節が腫れたり痛んだりする病気です。
進行すると、骨や軟骨が壊れて関節が動かせなくなり、日常生活が大きく制限されます。
リウマチのかかり始めには、熱っぽい、からだがだるい、食欲がないなどの症状が続いたり、朝方に関節の周囲がこわばることがあります。
その後、小さな関節が腫れ、やがて手首やひじ、肩、足首やひざ、股関節など全身の関節に拡がっていきます。
日本のリウマチ患者さんの数は、70万人とも100万人ともいわれ、毎年約1万5000人が発症しています。全人口からみた割合は0.5~1.0%で、この割合は海外でもほぼ同じとされており、地域による大きな差はありません。
関節リウマチは滑膜の病気です。
滑膜は、薄い膜と軟らかな組織からできています。これらは滑膜組織とよばれ、関節を内側からくるんでいます。リウマチによる炎症は、この滑膜組織から始まり、しだいに軟骨や骨に影響がおよんでいきます。
そのため、病気が滑膜組織にとどまっているうちに治療を始めれば、軟骨や骨が壊れるのを防ぐことも可能です。リウマチの早期発見・早期治療が大切な理由はここにあります。
この疾患の症状と診断
年齢別にみると、30~50歳代で発症した人が多く、男女比では人口1000人あたり女性5.4人、男性1.1人と、女性に起こりやすい病気でもあります。初発部位は手指・膝・足指に多いです。
❶ 朝のこわばり
リウマチに特徴的な症状です。からだや関節周囲のこわばりが、特に朝に強く現れます。
❷ 関節炎
関節は熱っぽくなって腫れますが、赤く腫れることはまれで、動かすと痛みが強くなります。左右対称に起こったり、あちこちに移動するのが特徴です。
❸ 関節水腫(かんせつすいしゅ)
関節が炎症を起こすと、関節の中にある液が大量にたまることがあり、この状態を関節水腫とよびます。
❹ 腱鞘炎(けんしょうえん)
腱は手や足の筋肉が骨に付着するところにあり、腱鞘という刀の鞘のような組織でくるまれています。腱もしくは腱鞘に炎症が起こると、腫れて指などの動きが悪くなります。
❺ 関節変形
リウマチが進行すると、関節が破壊され、筋肉も萎縮するなどして、関節が変形します。
関節リウマチの診断は、症状ならびに血液やX線などの検査値をもとに総合的に行われます。
最近では、より早期の診断を目指し、アメリカリウマチ学会(ACR)/ヨーロッパリウマチ学会(EULAR)による分類基準が用いられています。
合計スコア6以上で関節リウマチと診断。
この疾患の治療方法
以前のリウマチ治療は、薬で炎症や痛みを抑えたり、悪くなった関節部位を手術で取り除くくらいしか手立てがありませんでした。
しかし、新しい治療薬の登場により、炎症や痛みを抑えるだけでなく、病気の進行を食い止めて関節が破壊されるのを防ぎ、患者さんの生活の質を高める治療ができるようになってきました。
現在では、こうした薬を使った治療(薬物療法)を中心に、リハビリテーション、手術などを、必要に応じて組み合わせて治療を行うのが一般的です。
痛みを和らげる薬
(非ステロイド系抗炎症薬)
一般的な消炎鎮痛薬です。痛みや炎症を軽くすることはできますが、病気の進行を止めることはできません。
(ステロイド)
強力な抗炎症作用のあるお薬ですが、長く使っていると様々な副作用が出現します。使用の際には可能な限り少量で6カ月以内の短期間を目指します。
抗リウマチ薬
(合成薬)
現在のリウマチ治療の中心となっているお薬です。メトトレキサートは有効率が高く、関節破壊の進行を遅らせることができ、リウマチ治療の中心薬として使用されています。定期的に検査を受けながら服用することが大切です。
(生物学的製剤)
抗リウマチ薬の効果が不十分な場合や初期でも病気が進行しそうな場合に用いられます。リウマチ治療に革命をもたらしたと言っても過言ではないお薬です。現在までに7種類の生物学的製剤が使用可能になりました。また、最近では患者さんが自分で注射できるキットも登場し、より便利な使い方ができるようになっています。
起こってしまった変形に対する手術
リウマチのコントロールは良好でも、関節の骨・軟骨の破壊により手・足に変形が起きてしまう場合があります。
この変形が痛みの原因となっていて、お薬による痛みのコントロールが困難な場合には手術の適応となります。
リウマチのコントロールが良好なった現在では、股関節や膝関節などの大きな関節の手術は減りましたが、手や足などの小関節の手術が増えてきています。
これは別の見方をすると、リウマチ患者さんが手足の手術を必要とするまでに活動性が増えてきたということになります。関節リウマチの診断・すべての治療を当クリニックで行っています。