足関節捻挫(そくかんせつねんざ)

この症状について

足関節捻挫はありふれた外傷ですが、よく似た外傷との鑑別や程度により適切な治療方法が異なるなどの注意が必要です。捻挫の治療で、初期にしっかりと固定をしないと関節が緩くなり、捻挫しやすい足首になることがあります。

この疾患の原因と状態の説明

捻挫とは、関節を支持している靭帯や関節包が損傷することです。足関節捻挫のほとんどは、足関節を内側に捻って生じます。この受傷機転により、足関節外側の靭帯(前距腓靱帯・踵腓靭帯)が損傷します(図1)。

靭帯の損傷程度によって、捻挫の程度を三つに分けています。

1度捻挫:靭帯が伸びる程度の損傷
2度捻挫:靭帯の一部が切れるもの
3度捻挫:靭帯が完全に切れるもの
と定義しています。

図1:足関節捻挫で損傷する靭帯

足関節捻挫で損傷する靭帯は外くるぶしのすぐ前に付着し、ここに痛みを感じます。前距腓靭帯と踵腓靭帯はほぼ同じ部位に付着します。

この疾患の症状と診断

足をひねったという訴えがあり、外くるぶしの前や下に圧痛があり、腫れがあれば、この疾患を強く疑います。
レントゲン写真で、骨折の有無を確認し、腫れや痛みが高度の場合には、足関節外側靭帯(前距腓靭帯・踵腓靭帯)の損傷に合併して、距骨下靭帯(骨間距踵靭帯など)の断裂や関節軟骨の損傷を疑いMRI検査をすることが多いです。

-この疾患と間違われる事がある疾患-

足関節捻挫と似た受傷機転で損傷し、解剖学的に足関節外側靭帯の近くに位置する、

A)  二分靭帯損傷(図2BLの損傷)
B)  踵骨前方突起裂離骨折(図2BLの踵骨付着部での骨折)
C)  腓骨筋腱脱臼
D)  前下脛腓靭帯損傷(図2AITFLの損傷。別名:高位足関節捻挫 High Ankle Sprain)
などが診断の鑑別となり注意が必要です(図2)。

図2:足関節・足部の外側にある靭帯

足関節捻挫と同様な受傷機転でその他の靭帯が損傷することがあります。部位が近いですが詳細な診察で鑑別可能です。

この疾患の治療方法

捻挫の応急処置はRICEです。RICEとは、
R:Rest 安静
I:Icing アイシング
C:Compression 圧迫
E:Elevation 挙上
のことを言います。RICEはあくまでも現場での応急処置であり『捻挫=靭帯損傷』に対する治療ではないことに注意してください。

2度以上の損傷では、RICEに引き続き2~3週間の固定が必要と考えます。また、3度の捻挫で不安定性の非常に強いものには、手術をおこなうこともあります。

捻挫の治療で、初期にしっかりと固定をしないと関節が緩くなり、捻挫しやすい足首(足関節不安定症)になることがあります。足関節不安定症は変形性足関節症のリスクファクターです。捻挫後に足首の痛みが残っている時、捻挫しやすい時には整形外科を受診し正しい診断と適切な治療を受けてください。